オムジオ インダストリー リレーションズ担当マネージング ディレクター Lee Cutrone
昨今、「リスク軽減」が非常に流行しています。「リスク軽減」は、オムジオ設立以来、常に提唱し続けてきたことですが、コスト効果および効率の高いリスク軽減策の検討が今ほど重要になったことはありません。その点で、取引執行と同日に取引詳細を承認する取引日同日約定承認(SDA)の向上は、効果的なリスク管理を確実に行うため未来に向けた確実な一歩となります。
SDAは、フェイル取引を減らし、オペレーショナル・コストを削減し、投資家の皆様に透明性をもたらします。取引日同日に自動的に取引承認が実行されるので、取引はシームレスに瞬時に処理されます。取引の処理はさまざまな段階を連鎖的に進んでいくため、手作業での取引業務処理では、タイムラグや遅延が生じる恐れがあります。さらに、機関投資家サイドの業務処理が自動化されていなければ、取引承認がまったく実行されないという事態も起こるうえ、取引詳細の一部が機関投資家の明確な承認を得ないまま送信されてしまいます。特に現在のようなグローバル経済において、一夜のうちにどんなことが起こり得るかを考えてみれば、そのような事態が起こるべきではないのですが、実際、トレーダーの70%は、取引時間が終了してオフィスを後にするとき、取引相手が取引の承認を行ったかどうかがわかっていないのが現状です。
リーマン・ブラザーズとベア・スターンズの場合、当時、2週間前から両社の安定性に関する噂が流れていました。そして、木曜日の夕方、両社の綱渡り的な状況がより明確になってきたあと、翌月曜日には、一方(ベア・スターンズ)は買収され、もう一方(リーマン)は倒産に至りました。企業各社は、取引先の存続可能性が問題になったとき、即座に対応できなければなりません。SDAは、明日何が起きるかということに関係なく、今日執行された取引の詳細を同日中に確実に照合する手段となります。この問題に対処するため、米国債市場慣行グループ(TMPG)は、フェイル取引が発生した場合、企業が罰金を払わなければならないという罰則の導入さえ提案しました。現在のように大量の取引が行われるようになると、フェイル取引は単にバックオフィスに不便をもたらすだけのものではなくなります。フェイル取引が原因で、トレーダーは過度なコストを発生、蓄積させていて、それを投資家に負担させています。SDAが採用されれば、取引詳細について取引当事者は速やかに合意でき、その結果、オペレーションや決済のリスクを低下することができるのです。
今から数カ月前、弊社では、ヨーロッパにおけるSDA普及に関する調査をOxera Research社に依頼しました。この調査から、SDAとフェイル取引の減少との直接的な因果関係が明らかになったほか、フェイル取引の調整にともなうコスト軽減との関係もわかりました。フェイル取引の解決に必要な臨時費用が、記録管理、決済口座情報の照合、コーポレート アクション、補償請求の処理などの各機能部門で発生し、膨らんでいます。自動化により、ミドルオフィスの人員を増やすことなく、取引処理量を増加することも可能です。SDAが導入されれば、業務処理コストが削減され、その節約分は投資家に還元することができます。 現在のような市場情勢において、また、いくつかの詐欺事件が発覚した結果、投資家は今までよりはるかに様々な事情に精通する必要に迫られてもいます。Ernst & Young社の最近の調査「Investors on Risk」(リスクにさらされる投資家)によると、「リスク管理が不十分だと思われる企業への投資については、調査回答者の61%が投資を控えたと回答し、48%が投資を回収したと回答」しています。もはや、業績だけでは企業の成功を測ることはできなくなったのは明らかです。さらに、「回答者の82%は、優れたリスク管理が行われていれば株価にプレミアムが発生してもしかたない」と考えていました。企業は、競争力を維持するためには、安定性と防御を求める顧客の声を重視しなければならなくなっています。
グループで登山をする場合、私たちはいちばん足の遅い登山者と同じスピードで登るほかありません。同じことが、業務処理の自動化についても言えます。企業の業務処理は、自社の処理効率によっても左右されますが、それと同じくらい取引先の処理効率に左右されます。ごく一部の企業の業務処理が脆弱であるがために、それ以外の業界の全企業の業務処理の有効性が大きく低下してしまいます。ガイドラインまたはポイント・オブ・プルーフを探すのであれば、私たちはSDAの義務化を世界で初めてかつ唯一実行したカナダに目を向けなければなりません。カナダ証券管理局は、金融機関に対して、2012年までに取引の90%を取引同日中に照合することを義務付ける予定です。カナダでは、過去数年にわたって、義務的なSDAの実施比率を毎年引き上げる方法で、90%のSDA義務化の実現に向けて前進してきました。カナダでは、SDA実施率を引き上げるにともない、オペレーション、市場、決済に関するリスクの影響を受けやすい体質が改善され、大幅なコスト削減が実現したといいます。
同日約定承認(SDA)の正当性には、説得力があります。弊社は、取引同日における全取引の約定承認の実現に向けて総合的なアプローチの策定を終え、現在はバックオフィスとさらにはSDAを業界内での注目度をあげるため、効率的な金融サービスコミュニティに関心を寄せる企業の意識を高める努力を行っています。我々は、リスクを軽減し、効率を最大限に高めながらコストとリソースを最小限に抑えるため、一致協力して、煩雑な手作業中心から普遍的で相互に接続された電子市場へと取引環境をシフトさせることができるのです。 |
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